『夫（そ）れ仏法（ぶっぽう）遙（はる）かに非（あら）ず。

心中（しんちゅう）にして即（すなわ）ち近し。真如（しんよ）外（ほか）に非（あら）ず。

身を捨てて何（いずく）んか求めん。

迷悟（めいご）我に在（あ）れば、発心（ほっしん）すれば即（すなわ）ち至（いた）る。

明暗（めいあん）、他に非ざれば、信修（しんじゅ）すれば忽（たちまち）ちに證（しょう）す。』

＊訳

「さて、仏の教えというものは遠くにあるのではなく、私たちの心の中にあって、究めて身近なものなのです。

真実そのものは心の外にはないのですから、心のやどる我が身をかえりみずに、いったい、どこを探そうと言うのでしょうか。

迷いも悟（さと）りも私たちの中にあるのですから、悟りを求める心を発（おこ）し【発心】さえすれば、必ずさとりに到達します。

真実の智慧の光も煩悩（ぼんのう）の闇（やみ）も【明暗】、我が身以外の他所にはないのですから、信じて修行すれば、

たちまちにさとりを得ることができるのです。」

｛１．さて・・・・・夫れ・・・そもそも。　　　　

｛２．仏の教え・・・・・悟り、菩提。

｛３．真如・・・・・宇宙一切のにあまねく通ずる常住の真実。

｛４．発心・・・・・発菩提心（ほつぼだいしん）。ここでは初発心の時に、の意。